労働法

労働法はなぜ必要か

 

労働関係において労使は交渉力において対等か??

 

私的自治の原則

合意した個人同士は「自由で平等で独立した個人」という前提で、

国家は契約当事者の意思を尊重(法的に介入しない)

 

= 自由放任主義 ⇒ 資本主義の発展 ⇒ 二極化

 

   自由権    ⇒   社会権    の保障

 

両者の非対等性に鑑みた一定程度の介入 ⇒ 【私的自治の原則の修正】

 

形式的平等 ⇒ 実質的平等

異なるものを一様に扱うのではなく、差異を認めスタートラインをそろえた上で同一に扱う。

 

生存権の保障と勤務条件の法定

生存権の保障(憲法第25条)

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

労働者保護のための基準を設定(憲法第27条第2項) 

賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 ⇒ 労働基準法

 

労働基準法違反の契約(労働基準法第13条)

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

 

労働三権(憲法第28条)

団結権、団体交渉権、団体行動権  ⇒ 労働組合法

 

勤労権を保障する法(憲法第27条第1項)

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

 

 

日本的雇用慣行と法

  1. 長期雇用(終身雇用)
  2. 年功制(年功賃金、年功昇進)
  3. 企業別労働組合

解雇権乱用法理 ~日本食塩事件~

 ⇒労基法16条として法律化

 使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、

 社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる。

 

就業規則の不利益変更に関する判例法理 

 ⇒労働契約法第9条・10条

 

配転に関する判例法理 ~東亜ペイント事件~

使用者は個別的同意なしに労働者の勤務場所を決定することができる。
しかし、転勤命令権は無制約に行使できるものではなく、これを濫用することは 許されない。
業務上の必要性が存しない場合、不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合には、当該転勤命令は権利の濫用になる。
ただし、業務上の必要性は、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でない。

 

  

<長期的雇用慣行>
 ↓
労働者の期待は保護に値する
 ↓
外部労働市場の未発達
 ↓
解雇は失業につながる 
 ↓
生存権を脅かす
 ↓
解雇権濫用法理

<長期的雇用慣行>
 ↓
包括的な労働契約内容
 ↓
使用者の広い裁量
 ↓
配置転換・出向(解雇の回避)
 ↓
配置転換・出向に関する判例法理

 

広い経験・専門性の蓄積

 ↓

年功的賃金

 


労働法の主体

労働基準法上の「労働者」の判断基準

形式ではなく、実態に基づいて判断する

  1. 指揮監督下の労働か否か
    ①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
    ②業務遂行上の指揮監督の有無
    ③勤務場所、勤務時間に関する拘束性

  2. 報酬の労務対償性
     
     ⇒ ‘賃金を支払われる者'

  3. その他考慮要素
    ①事業者性の有無(機械・器具の負担関係)
    ②専属性の程度(他社の業務に従事することの制度的、時間的可能性)

 

個別的労働関係法上の「使用者」

労基法第10条

この法律で使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

集団的労働関係法上の「労働者」

労基法第9条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

 

労働組合法第3条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。

 

労働組合法上の「労働者」の判断基準

〈基本的判断要素〉
①事業組織への組み入れ
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性

 

〈補助的判断要素〉
④業務の依頼に応ずべき関係
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

 

  労働基準法 労働組合法 労働契約法
労働者とは

<9条>

使用される者で賃金を支払われる者

<3条>

賃金、給料その他これに準ずる

収入によって生活する者

(「賃金」でなくてもよい)

<2条>

使用されて労働し、賃金を支払われる者

法の目的

労働条件の最低基準を定めることにより、労働者を保護

労使の対等性の確保

団結権、団体交渉権、団体行動権の

擁護、手続を助成

労働者の保護を図り個別の労働関係の安定に資する
解釈

労働条件の最低基準で保護する目的であるため、保護を受ける対象を確定するための概念

売り惜しみのきかない自らの労働力を

提供して対価を得て生活するがゆえに、交渉力に格差が生じるため、集団的な交渉を通じた保護が図られるべき

・労基法より広い

 
判断基準

・指揮監督下の労働か否か

・報酬の労務対償性

・事業者性の有無(機械・器具の負担関係)

・専属性の程度(他社の業務に従事することの制度的、時間的可能性)

・事業組織への組み入れ

・契約内容の一方的/定型的決定

・指揮命令下の労務提供

 

・報酬の労務対価性

・業務の依頼に応ずべき関係

・一定の時間的場所的拘束

労基法9条に同じ

参考

これに準じる法

・労働安全衛生法

・最低賃金法

・労働者災害補償保険法

   
  労働基準法 労働組合法 労働契約法

使

<10条>

事業主、経営担当者、

その他事業主のために

行為をするすべての者

規定なし

<2条>

使用する労働者に対して

賃金を支払う者

労働条件の最低基準を定め

ことにより、労働者を保護

労使交渉の対等性の確保

団結権、団体交渉権、団体行動権の

擁護、手続を助成

労働契約の基本事項を定め、

契約締結を円滑にすることで

労働関係の安定に資する

労働条件の最低基準を

遵守させる責任主体として

「使用者」を規定

 <7条2号>より

労契法に同じ

 個別労働関係を安定させて

紛争の防止する目的から,

労働契約の一方当事者として「使用者」を規定

基準

・一定の権限を与えられているか

・上司の命令の伝達者にすぎぬ場合は使用者とみなされない

 

・会社は法人そのもの

・個人企業は事業主個人

参考    

労基法の「事業主」に相当。

同法の「使用者」より狭い概念です。

「労働者」は、労基法と労組法で、

「使用者」は、労基法と労契法で差異が認められる。

法が有する目的の違いから,「労働者」「使用者」の概念が異なる。

労働者・使用者の権利・義務

【労働者】 労働義務    賃金請求権

【使用者】 賃金支払義務  業務命令権(調査への協力、健診の受診なども含む)

 

労働契約は長期的人的関係であるため、信義誠実の原則が重要

「権利の遂行にあたり、相手方の権利や利益を不当に侵害しない」

つまり

使用者 ⇒ 配慮義務(安全、健康、人格的利益、仕事と生活の調和)

労働者 ⇒ 誠実義務(秩序遵守、秘密保持、競業避止)

 

<労働義務を示す判例>  水道機工事件・最一小判昭和60・3・7

本件業務命令によって指定された出張・外勤業務に従事せず内勤業務に従事した。

債務の本旨に従った労務の提供をしたものとはいえず、

内勤業務に対応する賃金の支払義務を負うものではない。

 

<賃金支払義務を示す判例> 片山組事件・最一小判平成10・4・9

労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、
現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとして
も、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の
配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能
性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提
供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが
相当である。

 

<業務命令権を示す判例> 電電公社帯広局事件・最一小判昭61・3・13

使用者が業務命令を発しうる根拠は労働契約にあり、労働者が当該契約によって

労働力の処分を許諾した範囲内の事項であれば、使用者に業務命令権が認められる。

 

業務命令権の限界 (下記のようなものは違法で無効)

  • 命令事項の性格や業務上の必要性などからみて、合理的限度を超える業務命令
  • 贈賄、談合、官庁への虚偽報告などの違法行為を強いる業務命令
  • 見せしめを兼ねた懲罰的目的からなされた人格権を侵害するような業務命令