独占的競争

独占と完全競争の中間

【不完全競争】:独占と完全競争の中間。多くの企業が該当。

        次の2パターンがある。

 

寡占

わずかな売り手しかいない市場。

例)たばこ、テニスボール

集中度という指標をもって測る。

【集中度】:市場の総生産量に占める4大企業の割合

 

独占的競争

類似しているが同質ではない製品を多くの企業が販売している市場構造。

例)書籍、映画、レストラン、クッキー

  • 多数の売り手:同じ顧客を相手に競争する企業が多数ある。
  • 製品差別化:各企業は、それぞれ少なくともわずかに異なる製品を生産する。
          したがって価格受容者ではなく需要曲線は右下がりとなる。
  • 参入・退出の自由:企業は制限なく市場に参入・退出できる。
             したがって経済学上の利潤はゼロになるまで調整される。

 

短期における独占的競争企業

短期において独占企業と似ている。他の企業と異なる製品を生産するため、

右下がりの需要曲線に直面する。したがって独占企業の利潤最大化ルールに従う。

すなわち、限界収入と限界費用が等しくなる量を生産する。

 

長期均衡

2つの特徴がある。

  • 独占市場と同じように、価格は限界費用を上回る
    なぜなら利潤最大化のためMR=MCとし、
    右下がりの需要曲線によって限界収入が価格を下回るため。
  • 競争市場と同じように、価格は平均総費用に等しい
    なぜなら参入と退出の自由から経済学上の利潤がゼロになるため。

 

利益⇒参入⇒利益0

損失⇒退出⇒損失0

 

参入と退出は、経済学上の利潤がゼロになるまで繰り返される。

 

独占的競争と完全競争

独占的競争と完全競争では、2つの違いがある。

 

過剰生産力

独占的競争では、効率的規模を下回る水準で生産する。つまり過剰生産力を持つ。

完全競争では、ATCが最低となる効率的規模の生産量で生産する。

 

マークアップ

独占的競争には限界費用を超えるマークアップ(利ざや)がある。

参入の自由の結果、利潤はゼロになったわけだが、

それは価格と平均総費用が等しくなったということで、

価格と限界費用が等しくなることまで保証するものではない。

 

現在の価格でもう一つ製品を買いに来る顧客を歓迎するか?

  • 独占的競争企業:歓迎する。価格が限界費用を上回っているから増益となる。
  • 競争企業  :気にしない。価格が限界費用と同じなので儲けも損もしない。

 

独占的競争と社会的厚生

非効率の原因

マークアップ(P>MC)の存在。独占価格による死荷重が発生。

 

参入が過剰または過小

  • 製品多様化の外部性:新たな企業(新製品)の参入で消費者には正の外部性をもたらす
  • ビジネス収奪の外部性:新たな企業の参入は、既存企業の利潤を奪う負の外部性をもたらす

 

広告

広告をするインセンティブが起こるとき

  • 差別化された製品を販売しているとき
  • 限界費用より大きい価格がついているとき

広告への支出

  • 非常に差別化された製品:収入の10~20%を広告に支出
  • 工業製品 :ごくわずかしか広告に支出しない
  • 同質の製品:まったく支出しない

 

広告をめぐる論争

広告は、資源の浪費か? 価値ある目的のための奉仕か?

経済学者の間でも白熱した議論が生じる。

 

広告への批判

  • 嗜好を操作している
  • 情報提供ではなく心理操作
  • 広告がなければ存在しなかったはずの欲望をつくりだす
  • 広告が競争を妨げる
    • 実際よりも製品に差があるように思い込ませる
    • ブランドへの忠誠心が要請され、類似した財との価格差を気にしなくなる
    • 企業は限界費用を上回るマークアップをつけ、死荷重が発生する

広告への支持

  • 情報を提供している
    • 情報により顧客はよりよい選択をすることができるようになる
    • その結果市場で効率的に配分する能力が高まる
    • 潜在的需要を掘り起こしているまで
  • 競争が促進される。
    • 顧客が情報を持つため、各企業の市場支配力は小さくなる
  • 新規参入を容易にする。
    • 参入企業は広告でアピールできる

 

政策立案者は、広告が市場を競争的にするという見解を受け入れるようになった。

 

品質のシグナルとしての広告

多くの広告は、対象商品の情報をあまり明らかにしていない。

広告それ自体が製品の質についての消費者へのシグナルである。

企業が広告に多額のお金を使おうという意思は、それ自体が品質を保証するシグナル。

広告の内容は関係ない。

 

 

ブランド

広告と同様に経済学においてブランドについての意見の不一致がある。

 

ブランド批判

  • 本当は存在しない違いを認識させる
  • 消費者のブランド品への支払許容額が大きいのは非合理

ブランド支持

  • 消費者に品質についての情報を提供する
  • 企業に高品質を維持するインセンティブを与える

 

 

3つの市場構造の比較

 

市場構造

完全競争 独占的競争 独占
3つが共有する特徴 
  企業の目的 利潤最大化 利潤最大化 利潤最大化
最大化のルール MR=MC MR=MC MR=MC
短期に経済学上の利潤を獲得できるか できる できる できる
独占と独占的競争が共有する特徴
  価格受容者・設定者 価格受容者 価格設定者 価格設定者
価格 P=MC P>MC P>MC
経済厚生を最大化する量を生産するか する しない しない
完全競争と独占的競争が共有する特徴
  企業数 多数 多数
長期における参入 できる できる できない
長期において経済学上の利潤を獲得できるか できない できない できる

まとめ

  • 独占的競争市場は、「多くの企業」「差別化された製品」「参入退出の自由」という3つの特徴がある。
  • 独占的競争企業の均衡は、完全競争と2つの点で異なる。
    • 独占的競争企業は、過剰生産力を有する。ATCの右下がり部分で操業する
    • 限界費用を上回る価格をつける
  • 独占的競争は、死荷重があり非効率。それはP>MCのマークアップにより生じる
  • 非効率を修正するための政府介入は、多様に差別化されている市場であるため限界がある
  • 独占的競争に内在する差別化は、広告とブランドにつながる。
    • 批判派:消費者の嗜好を操作し、競争を弱めると主張
    • 支持派:消費者に情報提供し、価格と品質について競争を促進していると主張