持続可能な発展

持続可能な発展とは(SD)

多様な思想・考え方を反映して、様々な定義がある。

 

Sustainable 

持続可能な :一般的な訳(放っておいても持続できるニュアンス)

永続可能な :特殊な意味を持たせた訳(人の努力を伴う)     

維持可能な :特殊な意味を持たせた訳(人の努力を伴う)

 

Development

発展 :望ましい状態への進化

開発 :人工的に自然を切り拓く

 

ブルントラント委員会(環境開発世界委員会WCED)の定義

「将来世代が自身の要求を満たそうとする能力を損なうことなく,現存する人々の要求を満たす発展」

 20数通りの定義

 

 ⇒自然か人間かではなく両方  経済発展もしつつ地球環境も守る

 

人間にとっての幸福とは何か?  

 

 

SDの定義の多様性

* 多様な思想・考え方を背景

* 環境思想の反映,文化・宗教的背景

* 自然環境と人類文明・社会・システムの行く末,あり方,希望,危機感

 

* 強いSDと弱いSD

   強いSD ⇒ 自然の資源を重視、人口の資源を軽視(自然保護主義)

   弱いSD ⇒ 人口の資源も一定の評価(それも持続可能)

 

「強いSD」は環境タカ派、価格をつけるまでもなく自然が一番という考え方

「弱いSD」は価格をつけて比較する。環境経済学の立場はこちら

 

環境経済学におけるSD

* 資源経済学におけるMSY(Maximum Sustainable Yields)概念の拡張版

      持続可能な最大収穫

 

  農業、林業、水産 ⇒ 再生可能資源

  石炭、石油    ⇒ 非再生可能資源

 

  ロジスティックカーブ(Sカーブ) ある程度増えたらそこから増加しない。

 

* ピアスらの整理(強いSD,弱いSD)

* 人工資本と自然資本の代替可能性

 

デイリーの問題提起(定常経済)

定常経済(H.デイリー):持続可能な発展の経済学

定常状態(J.S.ミル):すべての経済変数の変化率がゼロの状態(無成長)

 

定常経済の意義

 経済発展は環境を消費して成り立っている。

 経済成長がどこまでも続いていくと、どこかで地球環境は破綻する。

 経済成長をどこかで止めて、無成長の定常経済へと移行すること

 

*デイリーの思想

 環境という制約の中に経済がある。

 環境の大きさに対して好ましい経済の大きさというものがある。

 

*ブルントラント委員会(1987)のはるか以前(1848)に、J.S.ミルによって

 SDの概念は「定常状態」Stationary Stateとして論じられている。

   

*社会厚生の向上(人類のWelfare)

   所得がすべてではない ⇒清貧

 

成長(growth):量的な成長

発展(development):質的な発展 社会幸福 社会厚生の向上はこちら

 

経世済民思想としてのSD

*SDは経済学の目的「経世済民」そのもの,「環境」経済学固有の概念ではない。

*古典派経済学 とりわけ J.S.ミルの定常状態Stationary State

経済の再生産構造,毎期繰り返されるシステムの存立条件,長期の条件の探究

 その時の技術水準による生産コストに見合う価格 = 自然価格(Natural Price)

 

   見えざる手も再生産構造を支えている

 

 環境の制約の下での経済

 

 

SDの視点からの経済政策目標

・配分(効率)

・分配(公正)    この2つは従来からあった

規模(持続可能性) この新しい概念をデイリーが主張

 

経済政策の目標として

配分(アロケーション):資源配分 ←市場の原理を使う(産出に貢献しているか)

分配(ディストリビューション):所得分配 ←市場の原理とは別の考え方

 

資源配分        所得分配

 投入→→生産→→産出→→消費

   └←←←←←←←←←←←┘

 

産出に貢献した者に多く資源配分される

市場の原理では、多く産出した者に多く所得分配される(配分と分配が同じ

配分は効率性のみを重視。無駄がなければOK 単純 市場の原理

分配は公正性を重視 (何が公正か、正義か 時代や文化によって異なる)

 

H.デイリーの議論

従来の経済学は、船の積荷の配置を考えているだけ

積荷の量を考えないと船が沈む

 

環境マクロ経済学

デイリーが環境マクロ経済学の提唱

 

*適正な経済規模(持続可能な経済規模)

   生態学 生物学 も総動員

 

*エコロジー経済学

 

*長期の視点の必要性(→古典派経済学)

 

SDと経済思想・再論

SDは環境か経済かの問いかけに対する現代の回答 ⇒両方

 横軸に環境、縦軸に経済の平面において、右下がりの曲線上にフロンティアがある。

 その曲線上のみではなく、曲線を右にシフトさせる(技術革新)で

 環境も経済も手に入れる。

 

SDの定義は多様。(ブルントラント委員会1984が最初に定義) 

多様な経済思想を反映する⇒環境と経済の関係についての見方の相違

 

【強いSD】:悲観的 東洋的 自然崇拝

 自然のものは人間は作れない⇒再生不可能なものは使うな

    ┌─環境─┐

    │┌経済┐│

    │└───┘│

    └─────┘

 

【弱いSD】:楽観的 西洋的 自然と対峙

 自然のものを人口のもので代替できる⇒環境そのものよりも効用の持続性を重視

 人がどのくらい効用を感じるか(経済的価値を測る)

    ┌環境┐ →  ┌経済

    └───┘ ← └───┘

   

環境経済学の今後

1.外部性(市場の外部、取引対象でないもの)

2.環境の経済評価(取引対象でないものに価格をつける)

3.SD

 

*環境と経済の関係をどうとらえるか? どういう思想の下で?

*現在世代と将来世代,先進国と途上国

*経済の適正規模(環境マクロ経済学)

*対処療法的政策 と 予見的政策  

*総合政策,政策科学の視点