自然地理学

地形形成

マントル・地殻とプレート(リソスフェア)

安定地域と変動帯

安定地域 : プレートの中央

変動帯

 ├─ 拡がるプレート境界 海嶺 アフリカのグレートリフトバレー

 ├─ 狭まるプレート境界

 └─ ずれるプレート境界  アメリカのサンアンドレアス断層

 

地形形成作用

外作用

太陽の放射エネルギーで大気・水・氷などの流動を通じて地形を変化させる。

起伏を減少させる。 あらゆる場所に作用。

 

内作用

地球内部の熱エネルギーを原動力としたプレートテクトニクスによる

地殻変動や火成活動を通じて地形を変化させる。プレート境界に集中。

 

外来作用

地球外から物体が衝突し、クレーターを作る

 

※気圏・水圏・岩圏の間や、温度・密度が急激に変化する場所で地形が形成される。

 

 

侵食地形

地質構造やカンセキの性質で侵食・風化に対する抵抗力が異なる

 

堆積地形

外作用で運搬されてきた物質が堆積してできた地形

 

地形を形成する要素

 

  F = f ( M , P , T , E )

 地形   物質 作用 時間 環境

 

風化作用

物理的風化

物理的風化は、寒冷地や乾燥地で進みやすい

 

日射風化

不均衡な膨張と収縮で岩石が壊れる 砂漠地帯など温度変化が多い場所

 

シーティング

除荷作用 薄板状に岩石が割れる

 

凍結風化

水の凍結で9%膨張 岩石を割る 気温が0℃前後になる場所

 

塩類風化

岩石中で塩類が結晶化、塩の熱膨張で岩石を割る

 

乾湿風化

水分を含むと膨張、乾燥すると収縮する スレーキング

 

化学的風化

化学的風化は、熱帯多雨地域で進みやすい

化学的風化の方が、深部まで風化する

 

水和

鉱物に水分子が付加され、発熱反応により体積が膨張して岩石が弱くなる

 

加水分解

鉱物が水と化学反応し、別の物質になる

 

酸化

金属鉱物が酸化する

 

生物風化

バクテリアによる硫黄、鉄などの酸化  木の根の圧力(石割桜)

 

マスムーブメント

風化した表層の物質が重力により下方移動すること

 

ゆっくりした移動

  • 岩屑葡行 
    緩斜面で凍結した土壌の膨張・収縮で起こる(年に数ミリから数センチ)
  • ソリフラクション
    水で飽和された土壌がゆっくり流動。10~20度の斜面。寒冷地

速い移動

  • 落石
    急斜面から剥離した岩石が落下。崖錐(がいすい)を作る(θ<34°)
  • 山崩れ(斜面)、がけ崩れ(ほぼ垂直)
    風化物質が含水率の上昇や地震などによって塊状に崩落
    扇状の崩落堆を作る。
  • 地すべり(狭義)
    継続性があり特定地域に集中。移動した部分がある程度原形を留める。
  • 泥流・土流・土石流
    水に浸された風化物質が集合体となり高速に流下。

 

河川による侵食

侵食の程度

 小     中     大

リル ➝ ガリ― ➝ ほれ溝

 

流水の発生

・浸透能を上回る降水があり、地表流が発生

・リルやガリーが形成

・リルやガリーが次々と合流

・樹枝状の水系となる

 

峰に分水界(境界線)があり、その内側が集水域で支流が集まり本流となる。
そのような共通の河口を持つ川の集合体を水系という

 

侵食方式

磨食(ましょく) :荷重による物理的侵食

溶食(ようしょく):化学的侵食、石灰岩など(雨は弱酸性)

 

侵食方向

下刻作用(かこく):深く掘り下げる

側刻作用(そっこく):幅を広げる

谷頭侵食(こくとう):谷の最上流部を上流側に侵食

河成段丘(かせいだんきゅう):下刻と側刻の繰り返しや堆積と侵食の繰り返しで形成

河川争奪(かせんそうだつ):侵食力が異なる流域の境界で発生

 

侵食輪廻

幼年期 隆起 侵食基準面まで深い谷ができる

  ↓

壮年期  山と谷ができる

 ↓

老年期  山が丸くなり平野ができる

 ↓

準平原  山が少なくなる 再隆起

 

 

河川による堆積地形

河川による運搬様式

溶流(ようりゅう):カルシウム、珪酸などがイオンとして溶けている。見えない。

浮流(ふりゅう):軽石、木、葉、0.2ミリ以下の粘土・シルト・極細砂

掃流(そうりゅう):砂や礫が川底を移動、0.2-2ミリの砂(躍動)、2ミリ以上の礫(転動、滑動)

 

掃流が一番運搬量が多く、地形形成に大きく影響を与える。

 

礫などの粒径が大きいものほど、速い流速で堆積する。

下流ほど流速が遅いので、加入に行くほど粒径が細かい。

 

粘土やシルトは、粒子が丸く粘性があるため、一度堆積すると動きにくい。

最も侵食されやすいのは砂である。

 

 

沖積平野

扇状地 ➝ 自然堤防地帯(蛇行原) ➝ 三角州

 

扇状地

川が山地から出てくるところに形成。谷口を中心とする同心円状の斜面を形成。

・急激な川幅の拡大と勾配の減少による流速の減少

・洪水のたびに高所をさけて流路が四方八方に広がる

・粒度の粗い砂礫層

・河川水の浸透(末無川)→扇端部での湧水(湧泉)

・畑作や果樹栽培,水田にはむかない

 

扇頂(せんちょう)

扇央(せんおう)

扇端(せんたん)

 

蛇行原(自然堤防地帯)

・河道は傾斜が緩く蛇行する

・川の氾濫によって河道が移動する

   旧河道や三日月湖を作る   

・河道の近くには粒度の粗い物質が堆積し、自然堤防となる。

   水はけがよく集落や畑地に向く。

・河道から離れると粒度が小さい物質のみ運搬される。

   後背低地(湿地)、水田

 

三角州

・傾斜がなくなった河川は分流する

・分流した河川が物質を運搬し堆積する

・自然堤防に囲まれた中州ができる

・頂置層、前置層、底置層からなる

・河川の条件、海の条件によってさまざまな形態がある

 

海岸における作用と地形

海岸とは

・海岸線とは陸地と海水が接するところ

・常に位置を変えている(周期:数秒~数万年)

 

海岸地形を形成する作用

・波(風波、津波、潮汐)

・波長(L)、波高(H)、周期(T)、波速(C)=L/T、波形勾配(S)=H/L、水深(h)

・沿岸流(風、波によって駆動される海水の流れ)

 

波(風波)の性質

・水粒子の等速円運動(水の流れではない)

・水深が深くなるほど円運動の軌道は小さくなる

・海が十分深いと波は減衰せず遠くまで進める

・水深が浅くなると海底の摩擦で波形が変わる

・波長(L)の1/4程度の水深(h)になると、波により海底が侵食されはじめる。

・水深が浅くなれば波形勾配(S)が大きくなっていく

・波の屈折(進行方向が曲がる)

・波の干渉(二つの波が合体し、大きくなったり小さくなったりする)

 

砕波現象

・沿岸で波形勾配が増し、水の粘性の限界を超えると波は崩れる

崩れ砕波(海底勾配が緩い、波形勾配が大きい)

巻き砕波(中間)

くだけ寄波砕波(海底勾配が急、波形勾配が小さい)

・砕けた後の波は、磯波となって海岸に打ち寄せる(水流あり)

 

海岸地形

<砂浜海岸の模式断面図>

  • 沖浜、外浜、前浜、後浜、浜堤に区分される
  • 沖浜と外浜は砕波帯で区分される
  • 前浜は潮間帯(高潮線と低潮線の間)に形成される。通常時の波浪と潮汐。
  • 後浜は高潮線より上、高波、台風などで形成される。数段の汀段と浜崖
  • 浜堤は暴浪による打ち上げ、10数年に一度

沿岸流・離岸流

砕波した後の波は、水流を持っている。

打ち寄せる波は、沿岸流となり浜と並行に流れる。

やがて離岸流となり浜から沖に下がれてゆく。

 

砂嘴(さし)と砂州(さす)

砂嘴(さし)

・海に突き出した砂でできた地形

・沿岸漂砂により形成される

砂州(さす)

・砂嘴が対岸に(ほぼ)到達したもの

・潟湖(ラグーン)を形成する

 

岩石海岸

  • 海食崖、ベンチ(波食棚)、海食台
  • 海食崖の基部にはノッチや海食洞
  • 天井の高さ < 奥行き→海食洞
  • ベンチの形成は風化作用が関係している
  • 岩質によってはベンチが形成されない場合もある

 

風が作る地形

風が作る地形は、乾燥地域によくみられる

 ➝水の作用が少ない、植物が乏しい

風は砂より小さいものしか運搬できない

 ➝砂による物理的侵食や堆積地形となる

 

風による侵食作用

削磨(さくま)作用:サンドブラスト的に侵食(風食礫、キノコ岩など)

磨滅(まめつ)作用:砂粒が相互にこすれ合い、すり減っていく作用

          (砂丘の砂は等粒で円磨されている)

デフレーション:風化した物質を吹き飛ばし除去する作用

        (風食凹地、岩石砂漠、遅滞堆積物)

 

風による運搬

浮遊:シルト以下の細粒物(塵埃じんあい)

跳躍:乱流による砂粒の浮上、飛砂(大半は高さ0.25m以下)

匍行:転動や滑動

 

風上に大きな河川がある場所は、砂丘が発達しない。

 

 

 

周氷河作用と地形

周氷河地域は、陸地の10~15%

温暖地域との境界は諸説ある

(森林限界、構造土限界、永久凍土地域、最暖月平均気温10℃(ケッペンのE気候))

 

周氷河地形とは

氷河に覆われていない寒冷地域で、地中の凍結・融解による

物質の移動が起こり、特融の地形ができる。

 

 

 

凍結融解作用

水  固相  ⇔  液相   反復する(日周的、季節的)

 体積9%UP   流動する

 

凍結破砕作用(固結物質) →凍結風化、岩屑斜面 

 

融凍かく拌作用(未固結物質)

凍上:土が凍結する際、地表面が押し上げられる→岩屑匍行

凍着凍上:凍上する土に礫が凍りついて引き上げられ、長軸をたてて地表に押し出される

凍結割れ目:凍結による収縮でできる(-10℃) 

氷楔(ひょうせつ):割れ目にたまった水が凍ってできる 

集塊変位:不均等な粒度、含水量によって起こる不均質な変形。

     凍土中に閉じこめられた未凍結土の凍結圧による移動・変形 

ソリ(ジェリ)フラクション:融解時に凍土面が不透水層となり、

              過飽和状態の表土が流動する

凍結削剥作用: 融雪水、降雨で発生する流水による運搬で地表面が侵食され低下する

 

構造土

崖錐前縁堤:落石が崖錐の雪上を滑り落ちて先端に溜まったもの

 

 

 

氷河作用と地形

氷河は夏でも雪が解けない場所に形成される。

地球の陸地の10%が氷河(南極84%、グリーンランド13%、高山3%)

 

南極やグリーンランドのように大陸ごと覆っているものは氷床という。

いわゆる氷河は谷氷河に分類される。

 

氷が流れるメカニズム

 

・結晶間で動く  塑性(そせい)変形 (金属が曲がるように)

・底面の圧力融解で動く 底面すべり

 

 

氷河としての成立条件

・密度0.83g/cm3以上(雪からできるので気泡を含んでいる。冷蔵庫の氷は0.9g/㎝3)

・高所から低所へ、中央から周辺へ流動している

涵養域消耗域が存在すること

 

  涵養域(かんよう):氷河が育つ部分(降雪量>融雪量+蒸発量)

  消耗域:氷河が解けていく部分   (降雪量<融雪量+蒸発量)

  均衡線:その境界域          (降雪量=融雪量+蒸発量)

 

氷河による物質の運搬作用

上流部に起源がある岩屑は氷河底面で運搬

中流部に起源がある岩屑は氷河内部で運搬

下流部に起源がある岩屑は氷河表面で運搬

 それらすべては氷河先端に集まりモレ―ンという地形を作る

 

河川は液体が固体を運搬する

氷河は固体が固体を運搬する 

そのため運搬された物質に特徴がある。

 ➝大きさ、重さで選別されることなく運搬されるため、

  大きな礫、砂、粘土が混ざった岩屑の集合体(ティル)ができる。

  

氷河の侵食によってできる地形

U字谷: 河川はV字に、氷河はU字に谷を削る

圏谷:氷河源流部の半円形の急斜面

フィヨルド:U字谷に海水が浸入した細長い湾

羊背岩/鯨背岩:氷河によって削られてできた流線型の岩石

         上流側がなめらか、下流側が急

ホルン、アレート:三方または二方向から氷河に削られた急峻な山陵

 

氷河の融け水によってできる地形

ケーム:氷河中のくぼみにたまった岩屑による円錐状の高まり(融けて残った)

ケーム段丘:氷河の側面にたまった岩屑による段丘状の地形

エスカー:氷底のトンネルを流れる融水の堆積物によってできる線状の地形

アウトウォッシュ・プレーン:氷河の融け水で運搬された河川堆積物が、氷河前面に作る平野

 

氷河の運搬作用によってできる地形

ドラムリン:氷河の流動によって堆積層が流線型の高まりをつくった地形

モレーン:(堆石堤)氷河の運搬作用によって氷河側面や氷河末端にできた堤防状の高まり

      ラテラル・モレーン(サイド)、ターミナル・モレーン(エンド)

ケトル:岩屑中に残った氷塊があとで融けてできたくぼみ

 

懸谷:本流氷河と支流氷河が合流する際、U字谷の深さが異なるので

   段差が生じた地形。滝ができる。

 

 

カルスト地形

炭酸塩岩がつくる溶食地形

 

カルスト(Karst)とは:

炭酸塩岩[石灰岩(CaCO3)、大理石、ドロマイト(MgCO3)]分布地域に発達する

溶食による独特な地形の総称

Karst:イタリアとスロベニアの国境地帯。石灰岩による独特の地形が広がる。

ドイツ語では「岩石裸地」という意味。

 

地表面の12%をしめる。ヨーロッパ、中国、中米に多い。

日本は国土面積の0.5%程度と少ない。

 

石灰岩の形成

暖かい海のサンゴ礁が原料。

プレートテクトニクスによりサンゴ礁が移動し、大陸に付加する。

 

付加体なので、外(海溝)側ほど新しい岩体が付加されている。

 

溶食作用

空気中の二酸化炭素や雨でも溶食するが、土壌でより早く溶食が進行する

 

 CO2   +   H2O

(空気中)  (雨水、土壌水)

     ⇩

CaCO3   +   H2CO3(H++HCO3-)

石灰岩      炭酸

    ⇩ ⇧  溶けたり固まったり

  Ca2+ + 2HCO3-

 水素カルシウム溶液

 

溶食による地下カルスト断面図

カルスト地形形成モデル

独特な地形

ドリーネ:雨で溶けた窪地

ウバーレ:ドリーネが複数つながって大きな窪地となったもの

ポリエ:カルスト地形の最終形。沖積平野となる

 

鍾乳石 と 石筍

 鍾乳石は上からのつらら  石筍は下からのタケノコ

 やがてつながったらピラーとなる。

 

リムストーンプール:お風呂のようなもの

 

タワーカルスト:中国桂林 切り立った岩山

円錐カルスト:フィリピン ボホール島 お椀のような丘

 

陥没カルスト:鍾乳洞が崩壊し陥没する

 

崩壊期

カルスト崩壊

・家の下がいきなり陥没

・田んぼの底がぬける

・牛がいなくなる

・人がいなくなる

 

 

人間活動と地形

日本における伝統的製鉄業と地形変容

・たたら製鉄の時代、風化花崗岩から砂鉄を取り出していた。鍬などで簡単に掘れた。

・堅い部分は残され、鉄穴(かんな)残丘 と呼ばれる地形ができた。

・風化花崗岩は、鉄穴(かんな)流し という手法で比重選別をしていた。

・砂鉄以外の土砂は川に流され河口まで運ばれ、海岸に堆積する→弓ヶ浜半島の形成

現在は鉄穴流しはなくなったのと、砂防ダムなどの造成で土砂の量が急減し、

海岸が侵食されている。→皆生海岸

 

 

河川の流れを変える

信濃川の事例

・燕三条を流れる信濃川は度々氾濫したため、上流でバイパスさせ寺泊海岸へ流す計画が

 江戸時代からあった。実現したのは1924年(新信濃川)

・完成直後から信濃川河口の侵食が始まった。河口付近は5m/yで後退した。

 一方の新信濃川の河口付近は、土砂の流入で堆積が進み汀線が前進した。

 それも上流の奈川渡ダムの完成によってほぼ停滞した。

 

ナイル川の事例

・アスワンダム(1902)、アスワンハイダム(1964)の建設以降、

 ロゼッタ岬が侵食され始めた。140m/y

 

干拓と埋立

干拓

・干潟や浅瀬を堤防で仕切り、干上がらせて陸地にすること。

・標高が低い(海面下のことも)

 

埋立

・廃棄物や浚渫土砂、建設残土などで人工的に土地を造成すること。

・標高が高い(防潮堤の役割)