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行動指針

 

設備投資の分類

分類 説明
創業投資

これまで所有していない設備を導入すること。

画期的なものになるかリスクもある。

更新投資

取替投資ともいう。物理的、経済的な寿命から耐用年数が到来した際のリプレース。

技術革新が激しいと耐用年数まで経済的寿命がもたない。

増産投資

生産能力を高めるための投資。

需要予測が重要。

戦略投資

研究開発への投資。いつ成果がでるかわからない。

福利厚生や環境対策への投資。直接的な利益にはつながらないが長期的には有効。

投資計算の基本概念

投資の判断基準として、【利益率】【資本コスト】【回収期間】がある。

 

利益率

期待される利益額は大きい方がよいが、利益額が同じなら投資額が小さい方がよい。

投資額が異なる投資案件を比較する際は、利益率で判断するのがよい。

 [会計的利益率法]:減価償却費を計算に含める。

   年間利益率 =(年間の利益 - 年間減価償却費 + 残存価格)/ 初期投資額

  

 

 [内部利益率法:IRR]:初期投資額と等しくなるような利益率を求め、その利益率をハードルレートと比較して判断する。

経営学総論ⅡのIRRも参照のこと。


資本コスト

投資資金を自己資金から捻出するか、外部から調達するかの区分

 [内部金融]:内部留保資金(自己資金)からまかなう。機会原価が資本コスト。

 [外部金融]:借入金、株式、社債 で調達。次のように直接金融と間接金融に区分できる。

    ├[直接金融](株式や社債)で調達。配当金や社債利子が資本コスト。

    └[間接金融](銀行から借入)で調達。支払利息が資本コスト。

 

資本コストは投資額の元利合計。正味終価で投資判断をする。

例)銀行から年利5%で借り入れた200万円で投資し、1年後に250万円の利益を得た場合、

  200万円 × 1.05 = 210万円 が資本コスト

  資本コストを差し引いた正味終価は 40万円となる。

 

[計算利子率(社内利子率、内部利子率)]

自己資金で捻出した場合の機会原価の利子率をどう決めるか。

年度初めにその年に使用する利子率を決めておく。外部金融の標準よりもいくぶん高めに設定

それで正味終価が正の値なら、その投資案件は採択される。

 

回収期間

 

安全志向のため日本で多く利用されている。

 

 [回収期間]= 投資額 / 毎期の利益

 

このままでは時間的価値の概念が入っていないが、

考慮する場合は資本回収係数を利用して回収期間を求める。

年金現価と資本回収

 

次の3つの方法で判断される。

  1. 投資対象の耐用年数と比較して、回収期間がそれよりも短ければ採択する
  2. 複数の投資案件を比較した場合、回収期間が最も短いものを採択する
  3. 投資対象のあらかじめ規定している回収期間よりも短ければ採択する

 

経営学総論Ⅱのペイバック法も参照のこと。

経営学総論ⅡのDCF法も参照のこと。


利子計算

投資の効果は数年間に及ぶため、資金の時間的価値の計算が必要になる。

 

終価と現価

元  金 = P (現価・投資額)

元利合計 = S (終価)

利 子 率 = i

期  間 = n年後

毎期の収入 = R

 

終価を求めるには

元金に終価係数を乗じて求める。

 

例)現金20万円を年利6%で5年間運用しようとしている。

  5年後の終価はいくらか。

  200,000 × 1.3382 = 267,640

   現価   終価係数    終価

 

逆に期待する終価を得るためには

いくらの元金が必要かを求めるには

終価に終価係数の逆数(現価係数)

を乗じて求める。

つまり、現価 = 終価/終価係数 でよい。

それはSの現在価値(Present Value)である。

 

例)上記の例を逆算する。年利6%で5年間運用して267,640円を得るためには、

  いくらの元金が必要か。

  267,640 × 0.7473 = 200,007(四捨五入誤差)

 

年金終価と減債基金

毎期末に一定の収入Rがn年間得られるとした場合、終価Sはどのようになるか。

 

終価Sは、右のように求められる。

大カッコの部分は、年金終価係数という。

終価S = 毎期収入R × 年金終価係数

 

例)5年後に外車を購入するために毎年度末に

  20万円ずつ貯金する。年利6%の運用機会が

  ある場合、5年後の終価はいくらになるか。

 

  200,000 × 5.6371 = 1,127,420

   収入R  年金終価係数   終価S

 

逆に期待する終価を得るためには

毎期末いくらの収入が必要かを求めるには

終価に年金終価係数の逆数(減債基金係数)

を乗じて求める。

毎期収入 = 終価S × 減債基金係数

 

例)上記の例(年金5年、年利6%)で、5年後に150万円貯めたいとしたら、

  毎期末にどれだけ貯金しなくてはならないか。

 

  1,500,000 × 0.1774 = 266,100

   終価S   減債基金係数 毎期収入

  

 

年金現価と資本回収

年金の終価の現在価値を求める方法。

大カッコの部分を年金現価係数という。

経営学総論Ⅱの「年金」も参照のこと。

 

例)毎年度末に25万円の年金を5年間受け取る。

  この年金を年利6%で投資する機会がある。

  この年金の現在価値はいくらか。

 

 250,000 × 4.2124 = 1,531,000

 収入R   年金現価係数  現在価値

 


現在価値から毎期末の収入Rを求めることができる。

大カッコの部分は資本回収係数という。
年金現価係数の逆数

収入R = 現在価値 × 資本回収係数

 

例)300万円の新車を年利8%の5年の元利均等ローンで購入する。

  毎年の返済額はいくらか。また元金と利息に分解して答えよ。

 

  3,000,000 × 0.2505 = 751,500

   現在価値  資本回収係数 収入R(毎年の支払い)

      元金   利息   元利合計

  1年目 511,500 240,000   751,500

  2年目 552,420 199,080   751,500

  3年目 596,614 154,886   751,500

  4年目 644,343 107,157   751,500

  5年目 695,890  55,610   751,500 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     3,000,767  756,733 3,757,500

  

投資計算の方法

代表的な3つの判定方法がある。

  1. 回収期間法・正味現在価値法
  2. 利益率法
  3. キャッシュ・インフローが不確実の場合

回収期間法・正味現在価値法

問題点:毎年の利益が正確に予測できるという前提 ➡ 現実には困難

 

 

資本回収係数

 I0 : 初期投資

 R : 毎年度末の純収入

 i: 計算利子率

 

 n : 年数

このように変形して ➝

 

得られた資本回収係数から

複利表で年数や利子率を確認する。

例えば、初期投資1200万円、毎年度末の純収入が300万円 計算利子率8% の場合

  300万円/1200万円=0.25 ←これを8%の複利表の資本回収係数から探す

5年弱の回収期間だとわかる。

 

利益率法

会計的利益率法

年間利益率で投資案を評価する方法で、減価償却費を考慮に入れている点が特徴である。

計算方法は、年間の純収入から年間減価償却費を差し引き、残存価額を加えたものを

 

初期投資額で除することで年間利益率を求める。

 

Pr:年間利益率

Oc:年間の純収入

W:年間減価償却費

S:残存価額

I0:初期投資額

 

内部利益法(IRR)

正味現在価値がゼロとなるような利回りを求めて評価指標とする方法である。

はじめにハードルレートとなる内部利子率を定めた上でIRRを計算する。

IRRがハードルレートよりも大きければ投資対象とする。

 

考え方としては、この式の➝ 

NPV(正味現在価値)がゼロになるような

 i を求める。

実務的には、この式➝ を用いて

I0÷Rで年金現価係数を求め、

複利表かExcelなどで計算して

 i を求める。