財務諸表分析

分析者の立場による分類

内部分析

企業の内部者(経営者や管理者)が

自社を分析すること。

階層に応じて利用できる情報が異なる。

 

外部分析

企業外部の第三者が

主に公開されている財務諸表で分析すること。

 


情報タイプによる分類

定量情報

数値として表現できる量的情報

  • 財務諸表
  • 販売数量
  • 販売シェア
  • 生産数量
  • 従業員数
  • 株価

 

定性情報

数値としては表現しにくい質的な情報

  • 経営者の資質
  • 従業員の熟練度
  • 業界での地位
  • 技術開発力
  • 規制の有無

 


分析の方法

比率分析

2つの数値の比率をパーセンテージで表す方法

  • 売上高経常利益率
  • 流動比率
  • 当座比率
  • 固定長期適合率
  • 自己資本比率
  • ROA
  • ROE
  • 百分比財務諸表分析

 

実数分析

結果が実数で表される方法

差額の単位の異なる数値の割り算など

  • 1株当たり純資産
  • 従業員1人当たり売上高

 


単表分析

単一の財務諸表、かつ単一期間を対象とする分析

  • 損益計算書の構成比率分析
  • 貸借対照表の構成比率分析

 

複表分析

複数の財務諸表を組み合わせてする分析

 

単期分析

単一期間で複数の財務諸表を組合せてする分析

  • 資本利益率分析

複期分析

複数期間の複数の財務諸表を組合せてする分析

  • 趨勢分析

分析結果の判断基準

標準指標との比較

定期的に刊行されている標準指標

  • 産業別財務データハンドブック(日本政策投資銀行)
  • TKC経営指標(TKC)
  • 法人企業統計季報・年報(財務省)

 

他社指標との比較

他社の財務諸表を分析して求めた数値を比較し、分析対象企業の指標の良否を判断する方法。

 

期間比較

分析対象について、数期間に渡っていくつかの指標を算定し、

数値を時系列に見て、傾向を判断する。

 

成長性および伸び率の分析

売上高、利益項目や資産、負債、純資産項目を対象とする趨勢分析。

最も基本的な複表分析。

 

  X0年度 X1年度 X2年度 X3年度
資産合計        
流動資産        
純資産        
売上高        
売上総利益        
営業利益        
経常利益        
税引前当期純利益        
当期純利益        

対前年度比率

   対象年度/前年度 × 100

        対前年度比率は、総額(グロス)で期間推移を表す

        例)103%  98%

 

伸び率(増減率)

   (対象年度ー前年度)/前年度 × 100

        伸び率は、増減の純額(ネット)を比率で表したもの

           例)3%  -2%

 

対基準年度比率

   分析対象/基準年度 × 100

        特定の期の数値を基準(100%)として他の期の数値を%に置き換えたもの

 

 

安全性の分析

支払能力、債務の弁済能力の判定指標として用いられる。

貸借対照表の単表分析。

 

 


流動比率

   流動資産/流動負債 × 100

        融資の審査に用いられる。流動負債は流動資産でまかまうことが現実的。

        負債を決済するのに十分な流動資産があるかを判定する。

 

注意:流動資産には棚卸資産も含まれる。売らないと資金にならない。

小売業など日銭が入ってくる業界は流動比率が100%を切っても問題なし。

かつては200%を絶対規準としていたが今日では130-140%程度でも良好と考えられる。

    

正味運転資本

   流動資産 ー 流動負債

        流動的な資金の正味額を意味する。

        

マイナスになると短期的な事業運転資金が不足する

 

当座比率

   当座資産 / 流動負債 × 100

      流動資産から棚卸資産を引いた当座資産を分子とする

      

自己資本比率

   純資産 /(負債+純資産) × 100

      分子は純資産とするか株主資本とするか見解が分かれる

      

フリーキャッシュフロー(資金のバランス)

   営業活動によるCF + 投資活動によるCF

      投資活動を営業活動によるCFの範囲内で行えば、資金状況が安定する。

 

フリーキャッシュフローが常にプラスである必要はなく、

中長期的に均衡的であることが重要。

      

収益性の分析

資本利益率の指標

資本利益率(ROI:Return on Investment)

 

総資本経常利益率

総資本経常利益率 

 =経常利益/負債純資産合計

 総資本=総資産 ※総資産を前期末と当期末の期間平均とすることも

 ROIやROAは一般にこの指標を指す

 

自己資本利益率(ROE:Return On Equity) =当期純利益/自己資本

投下資本に対する利益率。投資家が投資判断に使用する。

8%以上で投資する価値あり。10%以上で優良企業...(絶対基準ではない)

ROEを高めるには、「売上高当期純利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」を高める。

 

【財務レバレッジ】(総資産/自己資本)

他人資本(負債)をどの程度有効活用しているかを示す指標。

多くなり過ぎると負債過多なので注意。

 

ROE = 当期純利益/自己資本

 

財務レバレッジ = 総資産/自己資本

 

 

ROA = 当期純利益/総資産

 

売上高当期純利益率 = 当期純利益/売上高

 

総資産回転率 = 売上高/総資産

 

 

 

1株あたり分析

1株あたり当期純利益

EPS(Earning per Share) =当期純利益/発行済株式数 (円)

時系列で見るのは意味があるが、他社と比較してもあまり意味がない。

 

株価収益率

PER(Price Earning Retio) =1株あたり株式時価/EPS (倍)

  日経平均:13.79倍(2021/5/21)

  株価の妥当性判断に用いられる。

 

1株あたり純資産

BPS(Book-value per Share) =純資産/発行済株式数 (円)

  その企業の最低株価の目安

  企業が解散したとしたら株主に払い戻される金額。

  実際には企業が継続を前提に評価されている。

 

株価純資産倍率

PBR(Price Book-value Ratio) =1株当たり株式時価/1株当たり純資産 (倍)

  企業の純資産の水準に対して株価が相対的に高いか低いかを判定する目安

  2021年5月現在 東証1部全銘柄平均 1.29倍

 

1人あたり分析

従業員1人あたり売上高

従業員1人あたり売上高 =売上高/従業員数 (円)

  生産要素を効率的に活用しているか、生産性分析である。

  人的資源の観点からみた生産性の尺度。

 

指標の略語

日本語 英語 略語 計算式
総資本利益率 Return on Investment ROI 当期純利益/総資本
総資産利益率 Return on Assets ROA 当期純利益/総資産
自己資本利益率 Return on Equity ROE 当期純利益/自己資本
1株当たり当期純利益 Earnings per Share EPS 当期純利益/発行済株式数
株価収益率 Price Earnings Ratio PER 1株当たり時価/EPS
1株当たり純資産 Book-value per Share BPS 純資産/発行済株式数
株価純資産倍率 Price Book-value Ratio PBR  1株当たり時価/BPS